IndiegogoがArrowという企業と共同で、有望なプロジェクトに資金提供するというキャンペーンを行っています。
その栄えある第一号のプロジェクトが決まりました。しかしそれは、もともとKickstarterで生まれたプロジェクトでした。
キャンペーンの内容
2016年9月20日、Indiegogoが新たなキャンペーンを発表しました。Arrowと共同でIndiegogoの有望なプロジェクトに資金を提供するという内容です。総額1億ドル(約1.04億円)です。(英語)
この資金は貸し付けでもなければ、自社の株式と交換する出資でもありません。つまり返済不要かつ、経営権も自分たちのものという、ものすごくいい条件です。(規約をざっと読んだだけなので、細かい縛りはあるかもしれませんが)
実際にお金を出すのはArrowという会社です。Arrowは電子部品を販売するアメリカの会社です。サイトを見ると、例えばオムロンのフォトトランジスターが売られています。
Arrowのトップページにも、今回のIndiegogoのことが大きく載っています。
採択されたプロジェクト
今回採択されたのはKordBotという、作曲用のキーボードです。以前紹介したので覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
今回の採択により、KordBotの開発元は自由に使える2万5千ドル(260万円)の資金を得ました。キャンペーンの総額は1億円ですが、一つのプロジェクトに全て注がれるわけではなく、小分けされます。小分けの仕方も規約で決まっています。
KordBotが普通の音楽用鍵盤と何が違うかというと、ややこしい同時押しをしなくても和音(コード)が鳴らせるという点です。通常、三つ四つの同時押しが必要なところ、KordBotならボタン二つで鳴らせます。作曲目的なら手っ取り早いじゃないかという訳です。
発案者はこういったものが音楽業界には当然既にあるだろうと思って探してみました。しかし実はなかったので、それなら自分で作ってしまえということになりました。そこでパートナーを探していたのですが、面接の時に意外なことが判明しました。
発案者は昔、コモドール64(大昔のパソコン)で音楽を作る本を愛読していました。発案者が音楽業界に入るきっかけになった本でもあります。その本の著者が面接した人の中にいたのです。「自分は迷信深い方ではないが、これにはなんというか驚いたね」と言っています。その人はソフトウェアエンジニアで、KordBotのパートナーになっています。
クラウドファンディング
試作品を作った後、二人はクラウドファンディングに製品を掲載しました。しかし載せた先はIndiegogoではなく、Kickstarterだったのです。今回の資金援助はIndiegogoとArrowによって選ばれたものですが、KordBotは元々はKickstarterを出発点としたプロジェクトでした。
Indiegogo運営も、もちろんこのことは承知しています。紹介文の中でも名前は出していませんが、「別のプラットフォーム」とKickstarterのことを指して書いています。
Kickstarterでの期間終了後、プロジェクトをIndiegogoのInDemandとして載せています。InDemandは期間の縛りのない、随時受け付け状態です。
またその後、IndiegogoとArrowが提供する技術協力プログラムに申し込みました。Arrowの技術者がアドバイスをしてくれるというものです。Arrowは電子部品の販売会社なので、非常に苦労する部分である製品の量産などについては詳しいというわけです。
この意味では、Kickstarterが最初だったのは確かですが、Indiegogoも無縁ではなかったと言えます。特に開発元は、Arrowのアドバイスが非常に役に立ったと強く言っています。
なぜKickstarter発のプロジェクトが?
確かにIndiegogoもKordBotに影響を与えてきましたが、それにしてもライバル発のプロジェクトに援助するというのは驚きです。
理由としては次の二つがあげられると思います。
まずIndiegogoは、あまり細かいメンツにこだわらないという点です。前々から、Kickstarterで期間終了したプロジェクトをIndiegogoのInDemandに載せるということを推進してきました。これはかなりおおらかな精神でないとできないことです。
そういう社風なのだと思いますが、これが理由の一つ目としてあげられると思います。
二つ目は、デジタルグッズ系のプロジェクトが、かなりの部分Kickstarterに流れていることです。Kickstarterが対象国を拡大してきたことや、Kickstarterが有名になってきたことにより、英語圏のプラットフォームとしては一極集中が進んだと思います。
そんな中ユニークかつ有望なプロジェクトを探すと、IndiegogoとKickstarterの両方に出ているものにあたる可能性がそれなりにある。というところではないでしょうか。Indiegogo単独のものから選ぶことも、もちろん不可能ではないですが。
今後
今回は第一弾ですが、まだまだ資金プールは残っています。どんなものが選ばれるのか楽しみではないでしょうか。
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