スターファイア・スペースキャノン、個人で作るマスドライバー(宇宙への打ち上げ用大砲)

スポンサーリンク

starfire
現状、衛星打ち上げには大がかりな設備が必要で、とても個人ではできません。もし誰でもできるようになればすごいのではないでしょうか? いろいろなことができそうです。
スターファイア・スペースキャノンの起案者、Richard Grafさんも最初はとても無理だと考えていました。しかしもっと安く打ち上げをできないか考えたすえに、スターファイア・スペースキャノンの開発を始めました。

なぜロケットではなく、カノン砲?

starfire2
人工衛星の打ち上げには、普通はロケットが使われています。もちろん日本のJAXAでもそうしています。
ロケットは長い間宇宙開発に使われてきており、安定しています。ただ問題は、運びたい衛星だけではなく、燃料タンクやロケットエンジンなどいろいろな装備も同時に打ち上げる必要があることです。
このためロケットは大きくなってしまうし、お金もかかってしまいます。相当大きなブレークスルーがなければ、ロケットを今以上に小型化するというのは難しいでしょう。
その一方で、「砲台型」の発射装置ならば、空気抵抗の小さいもので衛星をくるみ、打ち上げるだけです。非常にシンプルです。小型化できるし、同時に値段も安くなります。

スターファイア・スペースキャノンの特徴

スターファイア・スペースキャノンは、口径が20cm、長さが13.7mです。炸薬を燃やす燃焼室は、拳銃と違って複数あります。
こういった炸薬を使ったマスドライバー(打ち上げ装置)の問題点は、圧力が強すぎることです。炸薬を一回だけ燃焼させて加速を加える方式だと、強い圧力になります。(すくなくとも344 N/mm²ぐらい。数値だけ見てもわかりづらいですが・・)
これだけの強い圧力だと、加速度(G)も非常に高くなり、数万G(地表で感じる重力の数万倍)にもなります。燃料や宇宙で組み立てる素材を打ち上げるのならばこれでもいいかもしれません。壮大な目標ではありますが、もし人間をこの方法で打ち上げるのならばとても耐えられないでしょう。
一方でスターファイアーキャノンでは、炸薬は複数用意します。砲の底から砲の口に向かって、順番に炸薬を燃焼させます。この方式ならば圧力が低くなり、その結果Gも小さくなります。また安定して加速させることができます。
その他の利点として、砲身を長くすれば発射システムを効率的にできることがあります。現状スターファイアーキャノンは13.7mですが、これは道路で運ぶ限界を考慮してのことです。原理的には砲身を2倍や3倍まで長くすることができます。
しかし移動させられるというのはすごいですね。移動式ミサイル発射装置みたいです。
starfire3

今後の予定

フェーズ1

最終的に予定している推力の半分で打ち上げ試験を行います。垂直打ち上げを行って、機械的な問題がないか確かめます。3セット行い、1セットで2回打ち上げます。2014年5月または6月を予定しています。

フェーズ2

地球の軌道近くまでグライダーを打ち上げます。このときに使うグライダーは、1960年に行われた高高度探査計画(HARP計画、アメリカ国防省とカナダ国防省の共同プロジェクト)で使われたものと同じようなものです。
このグライダーはアルミと鋼鉄で作ります。さらに砲身の中をスムーズに通すために、サボ(入れ物。戦車砲弾のAPFSDSでも使われている)を使います。テストは2回行い、一度につき2回の打ち上げを行います。このテストでは、グライダーの各パーツがうまく動作するかを試し、さらに前述のサボが正しく分離できるかを調べます。また高度100kmで自由飛行(グライダーなので)ができることを確認します。
旅客機の巡航高度が高度1kmぐらいなので、高度100kmというのは相当な高さです。
フェーズ1が順調に終わった場合、2014年8月から9月を予定しています。

ペイロード(積み荷)

積み荷はありません。位置を追跡するために電波発信機は入れますが、それ以外は特に入れません。
もしこの大砲の中に入って砲弾として飛びたい場合は(笑)、起案者まで連絡をくださいとのことです。いわゆる人間ロケットですね。ただし上空100kmまで行く片道切符ですがw いくらなんでもそれはないだろうとは思いますが・・。まあそもそも直径を大きくする必要がありますね。その場合は空力特性が変わってくると思います。

目標額

目標額65,000カナダドルに対して、$1285カナダドル集まっています。
試作段階とはいえ、こんなミサイル発射装置みたいなものを個人で作ったというのは、相当にすごいことです。もし日本でこんなことをしている人がいたら、警察か自衛隊に止められそうですね。世界広しといえど、こういう人はなかなかいないでしょう。
このスターファイア・スペースキャノンを支援したい方はKickstarterへどうぞ。
https://www.kickstarter.com/projects/1682852725/the-starfire-space-cannon
またKickstarterに、類似のプロジェクトもあります。こちらはロケットエンジンです。
3Dプリンターで作るエアロスパイク・ロケットエンジン
 

コメント