防水ドローンの計画が頓挫、さらに検察から訴えられる事態に発展 Lily

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Lilyという防水ドローン(小型無人ヘリ)を作る計画が2015年5月に公開され、事前注文を受け付けていました。この計画が頓挫しました。
それだけでなく、検察から裁判所に訴えられる事態にまで発展しています。
とても話がややこしいのですが、Lily自体はクラウドファンディングで支援金を集めたプロジェクトではありません。自力で事前注文を受け付けていました。クラウドファンディングとの関係は後述します。

Lilyとはどんなものだったか?

順を追って説明します。まずLilyドローンとはどんなものだったのでしょうか。
公式サイトはまだ残っていますが、防水であり、かつ折りたたみできてどこにでも持って行ける、という特徴が書かれています。
https://www.lily.camera/
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さらに空中に飛ばすことで、自分一人で動画を撮ることができる、というものです。歩いている場合は自撮り棒が使えますが、運動をしている場合には棒を持つわけには行きません。ヘルメットカメラでは自分自身が撮れません(スカイダイビングなどでなければ)。
そこでドローンによって撮ろう、というアイデアです。
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スノーボードのときにあれば楽しそうです。
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動画はこちらです。


コンセプトが良かったのか、3400万ドル(約38億円)のお金を事前注文で集めました。

Indiegogo

Lilyは、KickstarterやIndiegogoを使わず、自社のサイトで事前注文を受け付けていました。まだ製品は完成していないが、完成後に送るという方式です。
しかしその一方で、IndiegogoにもLilyのプロジェクトが掲載されていました。現在はページが見られないようになっています。
https://www.indiegogo.com/projects/lily-the-world-s-first-throw-and-shoot-camera
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しかしこのIndiegogoでのキャンペーンは、関係ない第三者によって無断で掲載されたものでした。Lilyの開発元からDroningOnやsUASといったメディアに連絡があり、自社サイトでしか受け付けておらず、無関係とのことでした。
・DroningOn(ドローニング・オン) (英語)
http://www.droningon.co/2016/06/06/lily-camera-drone-campaign-not-investigated-indiegogo/
・sUAS News(英語)
https://www.suasnews.com/2016/06/lily-drone-investigation-indiegogo/
クラウドファンディングとの関わりに関する説明は、ここまでです。Lilyの話に戻ります。

頓挫と返金

このLilyですが、開発がうまく進まずに、2016年2月の出荷が2017年の後半に延期されました。最終的に2017年1月12日、会社を畳み、事前注文した人に返金することが発表されました。
Lilyの公式ブログには、冒険が終わりを迎えた、というタイトルで説明が載っています。
https://www.lily.camera/adventure-comes-end/
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しかしそれだけでは終わりませんでした。

検察から訴えられる

会社を畳むことが発表された直後、Lilyはサンフランシスコ地方検察局から訴えられました。TechCrunch英語版が詳しく説明しています。なお返金と訴訟のタイミングがほぼ同時だったことについて、Lilyは無関係だと述べています。
https://techcrunch.com/2017/01/12/sf-district-attorney-lawsuit-against-lily-may-have-prompted-refund/
公正取引委員会(FTC)の規定(Mail Order Rule:通販に関するルール)では、事前注文を受けた後に出荷が大きく遅延した場合、無条件で返金する義務があります。仮に注文した人が構わないと言った場合でも、返金しなくてはなりません。
この規定に違反したと検察は主張しています。Lilyはクラウドファンディングのプロジェクトではなく、自社の事前注文であったため、このルールが適用されます。
事実、十分な時間があったにもかかわらず、訴訟の提起直前まで返金されなかったわけですから、この点に関して検察の主張は正しそうです。
ドローンに関するメディア「DrowningOn」は、検察が以下の理由も提起していると伝えています。
http://www.droningon.co/2017/01/15/san-francisco-superior-court-pursue-lily-drone-legal-battle/
・虚偽の動画による広告を行った(後述)
・消費者の保護に関する法律に関する違反があった
・虚偽の宣伝動画により事前注文でお金を集めた

偽りの動画

FTCの規定違反も問題ですが、今回の場合はそれだけではありませんでした。Lilyが載せていた動画は、実はDJI社の20万円以上する製品を使って撮影したものだったことが判明しました。厳密にはLilyで撮ったと言っていないかもしれませんが、明らかにこれはまずいです。
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加えて、Lilyを使って撮ったと言っていた動画の中には、実は他社のカメラ「GoPro」で撮っていたものも含まれていました。これは誤認をまねいたということではなく、明確な嘘になります。
検察が証拠として挙げた電子メールによれば、創業者は「公の場で嘘をつくと決めたなら、きわめて慎重にならないといけないと思う」と述べています。

まとめ

・Lilyという防水ドローンの計画が頓挫した
・サンフランスコ地検から会社が訴えられた
・デモ動画には重大な偽りがあった
Lilyはクラウドファンディングのプロジェクトではありません。しかし動画が偽りであったなど、ZANOに類似した点もあります。

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